国際交流委員会
JPDA海外デザイン視察ツアー2009


[担当理事]フミ・ササダ
[担当委員]村井 薫

開催日時 2009年6月9日(火)〜18日(木)
開催場所 スウェーデン、フィンランド
出席者数 36名

かねてより会員の皆様のご希望の多かった北欧ツアーが実現しました。当初の候補地は、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの4ヶ国でしたが、2009年6月のPDA(ヨーロッパ パッケージデザイン協会)のストックホルムでのコングレスに合わせて、スウェーデンをメインの訪問先とし、北欧4ヶ国の中で唯一言語や人種の違うフィンランドへも足を延ばすこととなりました。折しも新型インフルエンザの流行で、想定外のキャンセルも出ましたが、最終的には35名の募集人数を上回る36名のご参加を得ました。

6月9日朝に成田を出発。コペンハーゲンを経由してストックホルムのホテルに到着したのは夜8時過ぎでした。夜とはいっても北欧の夏はまだまだ日が高いので、長旅の疲れをものともせずに買い物に出かける方もいました。翌日は午前中に市内視察を行い、午後は自由行動、夜は参加者全員の自己紹介を兼ねた楽しい親睦ディナーとなりました。

11日は、1日で5社のデザイン会社を訪問するというプランで、海外視察ツアーの歴史に残る充実した内容になりました。最初の訪問先であるシルバー社(Silver)は、化粧品から食品まで幅広いジャンルの北欧らしい作品を多く手がけている会社です。2社目はストックホルム最大のデザイン会社、ストックホルムデザインラボ社(Stockholm Design Lab)。SASスカンジナビアン航空のCI等をはじめ、CIからパッケージデザインまで様々なデザインを手がけており、日本のアスクルのパッケージデザインやアンデルセン ベーカリーのためのデザインも開発していて、親近感を覚えました。3社目のBVD社もアスクルのパッケージデザインを開発おり、パッケージデザインや店舗グラフィックを主体に、きわめて北欧らしいシンプルで洗練されたデザインを多く開発している会社です。ここでは、我々のために軽食とドリンクでウエルカムパーティーを開いていただき、感謝感激でした。昼食後は、4社目のアモーレ社(Amore)を訪ねました。かつて銀行だった建物をデザイン会社として使っている会社で、元金庫をプレゼンルームに使っているなど、ユニークなインテリアも興味深く、ユーモアに富んだデザインやしっかりとしたコンセプトで開発されたデザインが多かったのが印象に残っています。現在開発中のデザインまで見せてくださって、参加者からは驚きと心配の両方の声が聞こえてきたほどフレンドリーでした。ストックホルム最後の訪問先はドルヘム社(Dolhem)。比較的規模が小さく、プレゼンルームには参加者が溢れて、熱気の漂う中、ドルヘム社長自らのプレゼンが始まりました。ここはパッケージデザインよりCIやグラフィックデザインをメインにしていて、一つ一つのデザインに力が漲っており、アイデアが豊富であるというイメージを感じました。

12日は全日PDAコングレスに参加しました。会場はストックホルムの郊外にあり、前面が海で後ろが岩山。そこにレンガとガラスで造った現代的な建物があります。午前中はスピーカーの話が中心でしたが、残念なことに同時通訳の力不足で多くの参加者が話の内容を十分に理解することができませんでした。午後はワークショップの形式で、参加者全員が2つのグループに別れ、シャンペンとビールのパッケージデザインを試みました。作成したデザインの中から優秀作品を審査して表彰するという企画でしたが、JPDA会員ではビールをデザインした、はちうま みほこさんとシバサキエミコさんが見事に優秀作品に選ばれました。この受賞は、参加したJPDA会員全員の誇りと喜びになりました。

13日は自由行動の後、次の訪問地ヘルシンキに移動するために大型客船シリアラインに乗船。穏やかな海を進む客船からの眺めは美しく、揺れもなくてまるで汽車の旅のようでした。船内にはショッピングモール、スーパー、レストラン、カジノまで、乗客を飽きさせない工夫がいっぱいで、一晩ではありますが、優雅な船旅を味わうこととなりました。

14日の朝にヘルシンキ到着。市内視察を行い、簡単な昼食の後、フィスカルス村に向かいました。ヘルシンキからバスで1時間半ぐらい走ったところの山中にあるこの村は、刃物メーカーのフィスカルス社の本社や工場があったところに工芸家や芸術家、デザイナー等が移住して工房やショップ、美術館などを開いている場所で、どのショップも興味深く、面白い作品が多かったです。じっくりと楽しむには時間が足りなかったのが残念でした。

15日はヘルシンキのデザイン会社4社を訪問。最初の訪問先タンゴ社(Tango)は、大手広告代理店のグループ会社であり、素晴らしいオフィス環境です。会議室はテーマ毎に面白い思考とこだわりでデザインされており、会議やプレゼンを行うこと自体が楽しいといった雰囲気でした。クリエイティビティもしっかりしており、ユーモア溢れる作品やデザインパワーを感じる作品が多かったです。2社目は広告会社でありデザイン会社でもあるキング社(King)。非常に短期間で大成長を遂げた会社で、デザイン力やクリエイティビティが感じとれる作品を多く制作しています。仲間が集まり楽しみながら仕事をしている雰囲気が伝わってきました。昼食後に訪問したハホモ社(Hahmo)は、マークやロゴデザインでは北欧を代表する会社で、CIとグラフィックデザインを得意とし、パッケージデザインはさほど多く手がけてはいませんが、どのデザインも非常にレベルが高く、スタッフも若く、活力に満ちていました。ヘルシンキ最後の訪問先ウイン&ウイン社(Win & Win)は、パッケージデザインをメインに多くのジャンルで仕事をこなしている会社で、作品紹介の後の質疑応答では参加者の多くの質問に一つ一つ丁寧に答えていただき、大変勉強になりました。

ストックホルムとヘルシンキで訪問したデザイン会社はどこも私達を歓迎してくださり、多くのレベルの高いデザインに出会うことができました。軽食やドリンクのご提供、参加者全員にお土産までいただき、心温まるホスピタリティに感謝の念でいっぱいです。また、36名の参加者全員が厳しい日程をこなして無事に帰国できたことを、何よりも嬉しく思っています。最後に、今回のツアーでご尽力いただきました国際担当理事、委員の皆さん、そして事務局長と事務局スタッフの皆さんに、心より御礼申し上げます。
 
































  北欧研修レポート

有限会社マキノデザイン 牧野 剛己

研修に訪れた会社、赴いた様々な地での報告は重なる点が多いと思われる。僭越ながら、私自身が当社の視点から得られた事項に関し、ここでは記載させて頂く。まず当社だが、パッケージデザインの専門会社ではない。デザインストラテジー、ブランディングデザインを主体とした、俗に言うところの立ち上げ屋、企画屋である。過去“パッケージ”という名称で行った事業は、企業のシーズをパッケージングした商材開発、繁華街のビル群を都市計画として一気に外装を一新させたビルディングパッケージ、そういった類である。商品の見た目を整えることもあるが、その場合は商材の開発から携わることが圧倒的に多い。これらを前提とした視点で、日本のデザイニングでこれから伸びてくるであろう部分、必要となるであろう部分としての学修成果を列挙する。
まず目を引いたのが、「デザインの捉え方」である。グラフィック・アドバタイズ・パッケージ・ウェブ、という枠がある。ここに、ブランディングマネージャーやストラテジストといった、企画屋が存在する。コンセプトプランからマスタープランへ移り、ディティールに取り掛かる、という流れである。中にはパッケージからブランディングする、という会社もあったが、基本は企画屋ありきの開発が主体だ。これは、フィンランドでの会議にて講演をされた方々からも推奨プランとして挙げられていた。これは、メーカーから消費者の手に届くまでの全ての流れが企画屋のコントロールによるため、伝達内容も所要時間も効率的に行える。最大の成果は、一貫したデザイニングにより、コンセプトがそのままスタイリングされることであろう。日本では現時点であまり見られないシステムである。少しずつ浸透し始めた世界ではあるため、ここは抑えておきたい動きだと思われる。
次に感嘆したのが、ユーモアである。細かく定められた日本の規律は、どこでも叫ばれる安心安全に則った良い話ではあるが、スタイリングに制限をかけることも事実だ。グラフィック全般に、ははは、と笑ってしまえるものも多く、日本的には「誤解を招く」「表示詐称」といったことになりかねない。表現は古いが、“モノ”に“コト”のデザインを施すことを楽しんでいる。国民性の違いも関係しているだろうが、それよりも、創り手と買い手が「デザイニング」に関する知識や関心、言えば理解度が高いのであろう。街中に溢れているデザイニングに関し、小さな店にいる買い物客や大きな店の店員などに尋ねたところ「楽しければ買い物もワクワクするよ。見た目で中身を間違えないかって?そんなの常識で間違えないよ。日本ってやっぱり細かいんだね!」といった、皆から同じような回答が返ってきた。
アドバタイズ、ポップ、パッケージ、それぞれのグラフィックがTVCF等も含め企画屋のコントロールで販売促進戦略を統治している分、場面ごとの細かな注意書きが不必要なのかもしれない。それによって、グラフィックの力で商品に説得力を持たせている。しかしそれを支えているのは、国そのものの普段の生活様式にデザインが溢れているという背景も強いだろう。私は一人で、研修先の会社がCIを担当したという音楽系のホールの現場を訪れた。現場監督の方が建築現場を隅々まで案内して下さり、文化が生活を支える、という話を熱く語ってくださった。現場監督がホールのロゴや告知ポスター、演奏される予定の曲やレストランのメニューを語るのである。語れるのである。仕事の関係上、私自身も海外へ渡るのは少なくないが、この現場監督のような様々な今を把握したデザイナーは欧米に、特にヨーロッパには多く存在する。酒のパッケージひとつ、会社の成り立ちから製法や酒税法、杜氏の思いをその酒や前身の酒をしっかりと呑んで理解し、最後に敬意と熱意をもってデザインを担当させて頂く、そういうデザイナーは今日本にどれだけいるのだろうか。
デザインという名称を付けた日本の複数の団体が連携し展開する時期も間もない。相互の役割を相互が理解し、次の世代の生活を豊かにするため、時間がかかってでも、日本を“デザイン”から豊かにできるような世界へ構築できるよう、デザインに携わる者として、デザイニングへの意識と責務を持ち続けたいものである。



JPDA海外デザイン事情視察 〜ツアーを終えて〜

株式会社GK グラフィックス 海老根典子

以前、同じ6月にストックホルムとヘルシンキを訪れたことがあります。当時とても暑かった記憶を元に、今回も半袖、サングラス、日焼け止め等、真夏の荷造りでバッチリ決め、意気揚々参加しました。
しかし夏だと勝手に思い込んでいた北欧はほぼ全日、雨に寒風、気温は昼間で10℃少し、まるで初冬のような寒さでした…。北欧の空と共に私の心がどんより暗くなったのは言うまでもありません。ストックホルムに到着後早速、H&Mにて上着、更にヘルシンキではマフラーを購入することで、結局この旅行中ほとんど青空を見せなかった寒空とともに、何とか耐えることが出来ました。カイロを頂いたりと同行の皆さんにも心配して頂き、この場を借りてお礼を申し上げます。

天候は生憎でしたが、今回の肝であるデザイン事務所見学は、大変見応えあるものでした。昨今日本でも様々な北欧デザインを目にする機会が増えています。シンプルで洗練されているのに、どこか親しみのある可愛らしいデザインたち。それらが生まれる現場を実際に、ナマで目に出来るこのツアーの醍醐味に心躍る気分でした。

ストックホルムでの5社、ヘルシンキでの4社、1時間ずつの駆け足訪問でしたが、その全部が期待を遙かに超えるものでした。作品は勿論のこと、とにかくその環境、オフィス空間、人を含め、どの事務所も素晴らしかったのです。

まずはそのオフィス。高い天井の古い建物を利用した趣ある佇まいは、Macやモダンインテリアと対比され、まるで異次元に迷い込んだような、えも言われぬ雰囲気をかもしだし、言葉にならないため息の連続でした。ミーティングルームやキッチンスペースにも各々趣向を凝らし、いずれもがインテリア雑誌を切り取ったようなお洒落さで、だからといって全く堅苦しくなく、開放的で、遊び心のある装いに、良いデザインを創り出す環境のあり方をみせられた気がします。

人も同様、もてなしの温かさには一驚しました。その中、お土産片手に小一時間で退出するのはホトホト恐縮の思いでした。
街を歩いてても、店員に至るまで、その印象は変わらずでした。北欧の方々のルックスが美しすぎて、クールでストイックなイメージばかりが先行していましたが、実際の人柄の良さ、親しみやすさは、デザイン同様に北欧の特徴なのだと感じた次第です。

環境大国ならではのサスティナブルデザインの話、女性のCEOやスタッフの多い点など、もっと深くお話を聞きたかったのですが、皆さんも同様だったのでしょう、質疑応答時はかなりの白熱した雰囲気でした。

人から環境まで、隅から隅までデザインを純粋に楽しんでる雰囲気がヒシヒシ感じとれた訪問でした。スキルやノウハウを得たというよりも、デザインに対する取り組み方や精神の本質を垣間見せられた気がしました。

シズル感のない食料品、説明の少ない日用品、可愛らしいイラスト…空でも持ち帰りたくなるほど魅力的な北欧パッケージデザイン。スパーマーケットに繰り出し、一心不乱にシャッターを押しまくる私たち。日本での実現は難しいかもなぁ…という疑念は残るものの、ひとまずそんな思い込みは捨てて、素直にデザインというものを楽しんでみようかという思いにさせられたのが、今回の北欧ツアーであり、それが最大の成果かもしれません。

1、2年後、参加者各々の成果によって北欧デザインのエッセンスあふれるパッケージが店頭に並ぶことを楽しみにしています!