第3回
レンゴー株式会社デザイン・マーケティングセンター
<2012年10月>

第2回
荒木志華乃デザイン室
<2011年3月>

第1回
ポーラ化成工業株式会社 デザイン研究所
<2011年1月>
 
第3回 【レンゴー株式会社 デザイン・マーケティングセンター】
パッケージとして、輸送包装材として時代のさまざまな側面を映しだす段ボール

  JR品川駅東口にそびえる品川イーストワンタワー。
JRの線路の列を見下ろすこのビルの15階に、レンゴー東京本社があります。

 段ボールを中心とする総合パッケージング・メーカー、レンゴー株式会社は2009年に創業100周年を迎えた段ボールの草分け企業。デザインの力で段ボールに新たな価値を生み出すデザイン・マーケティングセンターにお邪魔をして、段ボールの持つ機能、メディアとしての価値、環境対応など幅広いお話をうかがいました。
(お断り:掲載画像のパッケージサンプルは現在流通していないものもあります、ご了承ください。)


●段ボールにはメディア価値がある!
 青果物、飲料、食品から家電にいたるまで、あらゆる商品の包装に広く利用されている段ボール。それだけに、輸送、保管を主眼に、商品を包み守るという機能面だけがクローズアップされがちで、本来パッケージが持っている情報発信ツールとしての側面がやや軽視されてきたのが現実でした。
 「パッケージというより輸送包装材と思われているせいかメディアとしての価値が理解されにくく、“情報発信できるんですよ”と伝えることが大きな課題となっていました」(デザイン・マーケティングセンター 佐藤聖子さん)
 そこでレンゴーでは段ボールを「Medi Dan(メディダン=メディア段ボール)」と名付け、クライアントに単なる包装材としての資材購買の枠を超えた活用をデザインによって働きかけてきました。
「輸送包装材としての物流用段ボールは、識別用に品番、品名のみが入ったものがほとんど。対して“Medi Dan”は商品の存在をアピールして買い物客を惹きつけ、商品の価値や企業の情報を伝える役目を果たします」(佐藤さん)

左が「Medi Dan」、従来型と比較するとそのメディア効果がよくわかる


●消費者に訴える段ボールをめざして
 1980年代までの段ボールの役割は物流機能が主体でした。包む・保護する・運ぶという機能に特化し、効率の最大化を図る段ボールは、東京オリンピックが開催された1960年代の高度成長で一気に生産量が増加、その後も経済成長の波に乗って大きく成長を遂げていきました。
 1990年代頃からは消費者の価値観の変化や、売り場の多様化への対応が求められるようになりました。商品価値を訴求していける表現が求められるようになったのです。デザインの必要性も着実に増していったものの、低成長期に突入した1990年代末からは厳しいコストダウンの波にさらされ、中身識別用の文字情報のみという物流機能主体の方向に一気に引き戻されてしまったといいます。
 ブランドの品質感をパッケージでも表現しようと、デザインや印刷精度を追及するクライアントも一部存在する一方で、生産する半分近くの段ボールではデザイン性の低いものへと変わっていきました。白段ボールもより低価格な茶段ボールへと切り替わっていくなか、デザインチームではコストをかけずにデザイン効果を発揮する手法として、茶色地にも映える白インキの採用や、積み重ねた時に絵柄が連続する「バーチカルデザイン」など、段ボールのメディア効果を追求し続けました。
その後、コストダウンの方向に力点を置いていたクライアント側からも、あらためて段ボールを情報発信ツールとして活用しようという動きが出はじめたのです。
 
積み重ねた時に絵柄が連続する「バーチカルデザイン」の例。
キャラクターには白インキが使われている(ベースは茶段ボール)。



●店頭コミュニケーションの新たな武器に
 段ボールが注目された背景には、スーパーや大型量販店の販売スタイルの変化もありました。青果物だけでなく、酒類、飲料、食品から洗剤などの日用品までが段ボールのままで平積みされるようになったのです。商品のバリエーションが増え、改廃のローテーションも短期化するなか、ディスプレイや商品告知媒体としても機能する段ボールは、売り場にとっても非常に効率が良かったわけです。
 「さらに輸送から流通の現場に関わる多くの人びとの眼に触れるという、段ボールならではの特徴もあります。エンドユーザーに加え、流通やメーカー関係者、関連会社、生産者に対するインナーブランディング効果も期待できます」(佐藤さん)
 青果物などで初出荷時期に「初採り」「初出荷」と表記するのも、直接関わる生産者や市場関係者のモチベーションを高めようとの狙いから。アピールポイントが明記されていれば、小売店での販売オペレーションのサポートにもなります。スーパーのチラシなどに段ボール箱の写真がそのまま掲載されることも増えました。
 こうした需要を汲みとり、デザインチームでは平積みにしたときに側面がディスプレイ台の裾巻的効果を発揮するデザインや、開封してディスプレイする際に開口部がフレーム効果を持つデザインなど、店頭効果を狙ったデザインを心掛けているといいます。
「手にとって近い距離で見る商品パッケージと異なり、段ボールのデザインでは遠目に見たときに強いことが重要です。量塊性、色面力、注視効果、大量に陳列されたことによる売り場全体における面の構築、積み上げた時の連続性など多面的な効果を考えながらデザインしています」(佐藤さん) 
 実際に調査してみると、識別表示のみの段ボールに比べ、デザインを考慮した「Medi Dan」は発見促進力、情報訴求力、購買喚起力ともに2割近く向上したといいます。また、無地段ボールを単に窓開けしただけの場合の注視力が33%なのに対し、フレームデザインした場合には63%と、ほぼ倍近くの効果があったことが確認されています。(レンゴー デザイン・マーケティングセンター調べ)
 このように段ボールはコミュニケーションツールとしても極めて有効な媒体であるといえるのです。
 
上)「初出荷」を段ボールでPR
中)フレーム効果を持つデザイン
下)そのままディスプレイできる形状


コラム1)【段ボールのはじまり】
 段ボールの歴史は今から150年以上前、19世紀のイギリスで貴族の服の襟元をヒントに、波状に加工した厚紙をシルクハットの内側に使ったのが始まりというのが定説です(1856年に特許取得)。その後、アメリカで片面段ボールが生まれ、電球の包み紙など壊れやすいガラス製品を守るための緩衝材として使われるようになり、広く普及しました。そして、ほどなく両面段ボールが開発され、輸送用包装材としても利用されるようになっていきました。
 日本では1909(明治42)年、レンゴーの創業者・井上貞治郎によって事業化されたのが始まりです。輸入品の梱包材に目をつけ、波状の厚紙製造に成功し「段ボール」と命名しました。数年後、両面段ボールによる段ボール箱を開発。最初に採用されたのは化粧品の包装用外箱でした。段ボール箱はその簡便性に加え、製造当初から既に印刷適性がアピールされ、のれんや看板のように利用できると謳われていたようです。

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