JPDA学生賞2024
韓国研修レポート〈京畿大学〉
2024.10.15 韓国研修レポート
綾野裕次郎(穴吹デザイン専門学校卒/JPDA学生賞2023大賞受賞)
中野亜美(大阪成蹊大学/JPDA学生賞2022大賞受賞)
石井友規(香川大学/JPDA学生賞2022金賞・フジシール財団賞受賞)
ワークショップ〈京畿大学〉
10月15日は韓国のソウルにある京畿大学に行きました。みんなで渡辺有史さん(POLA)による講義を受けたのち、韓国の学生と日本の学生でグループワークを行いました。グループは、A〜C班に分かれました。
●渡辺有史さん(POLA)による講義
今回の講義では、パッケージデザインの発想やこれからのパッケージに求められる考え方について学び、大変勉強になりました。特にPOLAの化粧水のパッケージがどのようにできたか知ることができたのはとても貴重な体験でした。
「新しいラグジュアリー」をコンセプトに、現代アートを観察したり、彫刻の質感から学び取ったりしながら美的感性を磨いてパッケージを作り上げていく姿勢には、強いこだわりと大きな熱意が感じられ、刺激を受けました。
さらに、今年JPDAで大賞を受賞した「ポーラコスモロジー」についてのお話を聞くこともできました。このパッケージは、本来最後まで中身を出しにくいチューブに、カーブの効いたパーツをつけることで中身を出しやすくする機能性が加わっています。また、パッケージデザインには丸を2つあしらい、パーツを付けた際に顔のように見える遊び心も込められています。この小さな工夫が、生活の不便を解消するだけでなく、デザインで温かみを持たせる効果を感じ、とても感銘を受けました。
これからのパッケージデザインには、環境だけでなくより「心」に寄り添ったものや、問題解決をするだけでなく解決したことでより楽しくなるようなデザインが求められていると感じました。
また最近の、そしてこれからのパッケージデザインの動向を学ぶこともできました。切羽詰まる社会のなかで人々が「優しさ」を求めていたり、テクノロジーが続々と活用されているなかでクラフト感のある「アナログ」を求めていたりと、パッケージを通して、優しさやアナログ感を補給しているように感じました。渡辺さんの話の中にもありましたが「パッケージデザインは一番生活に近いもの」であることからその役割が大きいのかなとも思いました。
この講義を通して、生活の近くの素材や出来事に目を向け、日々勉強しようという、前向きな気持ちになりました!
〈大学でのグループワークについて「各チームの制作物」〉
●Aチーム1の制作物
私たちのグループは、温もりを感じるファミリー層向けのカップ麺のパッケージを提案しました。
まずはじめの話し合いで、蓋をカップにしてシェアできること、家のような見た目をしていることというアイデアでパッケージを作っていくことにしました。
大まかなビジュアルの方向性は決まったのですが、次に「どんな人に買って欲しいのか」を明確にするためターゲットを
ファミリー層に絞りました。家族でシェアできて心も体も温かい気持ちになるカップラーメンを作ろうということになり、制作していきました。
また、食事中だけでなく食べ始める前からのコミュニケーションも大切にしたいと考えました。食べること以外にもう一つコミュニケーションのきっかけが生まれるようにと
まるで家のおもちゃのような可愛らしい見た目にこだわりました。さらにお湯を注ぐと温度変化でパッケージの外側に可愛いキャラクターのイラストがランダムに浮き上がってくるアイデアを採用し食べる前から楽しめる工夫も盛り込みました。
味は韓国と日本両方で親しまれ、子供でも食べやすい味噌ラーメンを選びました。パッケージの色は温かみのあるオレンジを基調とし、味噌の風味を連想させるようにしています。
最後にカップ麺のネーミングについてです。韓国語で『微笑み』の意味を持つ미소(みそ)と味噌をかけて商品名はMISOに決定しました。
●Aチーム2の制作物
私たちのグループでは、”受験生を応援するカップラーメン”「FIGHT MEN」を提案しました。
受験生にとって夜食は心強い味方であり、応援の力は大きな支えです。そこで、ずっと頑張り続ける受験生が少しでも前向きになれるようなカップラーメンを制作しました。
このラーメンの特徴は、蓋を開けると応援のメッセージが英語で一言添えられている点です。日本と韓国のどちらでも販売できるよう、共通言語として英語を採用しました。また、蓋には吹き出しのデザインをあしらい、待機中に蓋が開かない工夫を施しています。
さらに、受験科目にちなんだシリーズ展開も考えています。各科目のイメージカラーを使い、それに連想される味とメッセージを付け加え、一目で科目と味がわかるようにしています。メッセージや学生のイラストを通じて、緊張した心を少しでも和らげ、受験生に前向きな気持ちになるようにと思いを込め、制作しました。
●Cチームの制作物
私たちのグループでは、「カップラーメンを乾杯する」という新しい体験を生み出すパッケージを提案しました。みなさんはカップラーメン、もしくはラーメンをどのような時に食べますか?私の場合、作業の休憩にみんなで小腹を満たすために食べたり、部活終わりに験Aチームなで食べることがあることや、元気を与える効果があることに着目しました。このことから「乾杯」というコンセプトを立てデザイン提案を行いました。「乾杯」の象徴的な存在であるビールを彷彿とさせるビジュアルや持ち手のあるパッケージ構造により、誰もが思わず「乾杯」したくなるようなパッケージを目指しました。また、「乾杯」という行為は日韓共に共通のため詳しく説明しなくても伝わりやすく、プレゼンにおいてもたくさんの頷きが見えたため落ち着いて話すことができました。
〈大学でのグループワークを通して学んだこと〉
●デザイン、アイデア出しの難しさ
韓国の学生とグループディスカッションを行う中で、両国で共通する認識と異なる認識があることに気づきました。
共通する認識としては、言葉からイメージされる色やイラストの印象がほとんど一致していました。たとえば、「信頼=青」「背中を押すような明るい気持ち=黄色」「穏やかな気持ち=緑」など、色から受ける印象に共通点が多く、スムーズに話を進めることができました。
異なる点としては、日本ならではの共通的な色の概念が韓国とは違う部分がありました。この違いをどう組み合わせるかについて話し合い、最終的にはグラデーションを取り入れることで両国の認識を調和させる方向に落ち着きました。このディスカッションから、韓国の学生は装飾を控え、色そのものにイメージを表現することでインパクトを出す手法を大切にしていることを学び、大変勉強になりました。
短い時間の中で、拙いながらも意見を交わしながら案をブレンドし、良い作品ができたと感じています。韓国の学生も「いいね!」「これも加えてみよう!」とジェスチャーを交えて楽しくワークができ、非常に充実した時間を過ごすことができました。
●言語の壁
私がワークショップの中で一番苦労したことはやはり「言語の壁」でした。コンセプトの背景や細かいディティールなど、言葉での説明が必要な場合が特に難しかったです。だからこそ、身振り手振りやイラストを用いて説明するなど工夫しました。
また、その中でもう一つ新たな発見をしました。
イラストや翻訳アプリは、もちろんコミュニケーションを助ける重要な手段です。しかし、私は笑顔や表情の豊かさ、声色もそれらと同じくらい大切だと気づきました。
笑顔で挨拶し、会えた喜びを表現すると、言葉が通じなくても自然と笑顔が返ってきます。表情が柔らかいと、言語が伝わらなくても、なんとなく場の雰囲気も和らいでいきます。
私は緊張してしまい、それがチームの雰囲気を硬くしてしまったのかもしれないと感じました。ワークショップでは自分の考えを言葉にすることが大切ですが、考えを伝えるための言語が違うために非常に苦労しました。今後はこの学びを活かして、柔らかい雰囲気を作れるようなコミュニケーションを心がけていきたいと思います。